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【部員の日記】 その16 ~方向転換機を作ろう~

この記事はペンパアドベント2023の16日目の記事として書かれたものです。


初めに


 こんにちは。「新宝島」と「新所沢」が似ていることに気が付いた、ぶすじまです。


 私はへやわけというペンシルパズルが好きでよく各種媒体に投稿をしています。ルールが少し複雑ですがその分いろいろな手筋がたくさんある非常に面白いパズルです! オンラインパズル投稿サイトのPuzzle Squareでは投稿数第二位であり世間的にも人気的なパズルです。

 そんなへやわけですが、手筋の中に「方向転換機」と呼ばれるものがあります(参照:へやわけ用語の基礎知識β)。「n in 2×n に入る黒マスのパターンは二通りあり、それが分断禁によって一意に定まる」ことを利用した手筋です。

↑方向転換機の例


 へやわけに知悉な人はおなじみかもしれません。私はこの手筋が大好きでよく多用しますが、方向転換機を作る方法は「n in 2×nのへやをつくる」以外にもたくさんあります。

 さらに、方向転換機はへやわけに限らず連黒分断禁系のパズルならなんでもできるんじゃないか?! と考えました(連黒分断禁系=黒マスが隣り合わず、黒マスで盤面を分断してはいけないパズルの総称)。


 というわけで今回は「いろいろなパズルで方向転換機を作る」というテーマで書いていきます。


 どんなパズルでも方向転換機を作るにあたって基本となる考えは次の図のようなものです。「どちらか黒マス」というペアさえできれば方向転換機は作れます!


 また、いろんなパズルの方向転換機について語る上で大きさというものを定義しておきます。下図のとおり入る黒マスのマス数です。概念としては大きさ1の方向転換機もありますが、今回は対象外とします。

 

 

パズルの分類

 パズル制作ツールpuzz.linkにおいて連黒分断禁系のパズルは計13種類あります。これらを、「へやの有無、数字の有無、数字マスが塗れるか否か、白2×2禁がある」の四つで分類しました。


おお~ いい感じにまとまった。

それではさっそくいってみよう!


※各パズルのルールはPuzzle Squareより引用しています。


 

へやわけ

へやわけのルール

方向転換機の作りやすさ ★★★★☆


問題①  6× 6 ★☆☆☆☆ らくらく

問題② 10×10 ★★☆☆☆ n in 2×n の利用

問題③ 10×10 ★★★☆☆ 白マス重視

問題④ 10×10 ★★★★☆ いろいろ詰め込んでみる


 方向転換機作成にあたっての原点にしてたぶん頂点のパズルです。n in 2×nだけでなく白マスで挟んだりしても方向転換機ができ、問題③ではそれをよく使っています。へやわけ特有のルールである三連禁は独特なの挙動を見せてくれるものの、方向転換機を潰すこともあるので注意が必要です。




 方向転換機は解いていて楽しいギミックなので、私が作問するときはなるべく潰さないように注意します(だいたいは三連禁が悪さする)。右図のようにへやをつなげることで解決することが多いですが、そうすると「他が確定することで方向転換機が湧いてくる」ことになり面白さも増えます。方向転換機を残すように作ればいい問題ができるはずなので、みんなもへやわけを作ろう!


∀人∃HEYA

∀人∃HEYAのルール

方向転換機の作りやすさ ★★★★☆


問題①  6× 6 ★☆☆☆☆ 簡単です

問題② 10×10 ★★☆☆☆ 点対称はいいぞ

問題③ 10×10 ★★★☆☆ 偶数ベース

問題④ 10×10 ★★★★☆ 奇数ベース


 へやわけ+点対称配置。へやごとに黒マスが点対称配置になるのでへやわけと違って3 in 2×3など大きさが奇数のものが使えなかったりしますが、工夫すれば再現できます。点対称配置と三連禁はどちらも強い制約でマスを確定させてくるので、方向転換機を破壊しつくすor芸術的な方向転換機を生み出す、の二択になる気がします。大きい部屋多めのほうが作りやすい気がします。


Akichiwake

Akichiwakeのルール

方向転換機の作りやすさ ★★★★☆


問題①  6× 6 ★☆☆☆☆ 簡単だぜ

問題②  8× 8 ★★☆☆☆ へやわけと似てるぜ

問題③ 10×10 ★★★☆☆ 俺は...へやわけじゃねえ...

問題④ 10×10 ★★★★★ 「This is A k i c h i w a k e


 へやわけ亜種その2。基本的なルールはへやわけと同じですが表出数字の意味が異なります。へやわけの数字がへやに入る黒マスの数を表しているのに対し、Akichiwakeの数字領域の中でのひとつながりの白マスのかたまりの面積の最大値を表しています。解いてるとわかりますが、慣れないうちは脳がバグります。慣れよう。慣れてきてへやわけにはできない動きができると楽しいです。へやわけのような方向転換機は「1 in 2×n」で簡単に作れます。


ワンルームワンドア

ワンルームワンドアのルール

方向転換機の作りやすさ ★★★☆☆


問題①  6× 6 ★☆☆☆☆ とりあえずやってみましょ

問題②  8× 8 ★★☆☆☆ 丁寧に方向転換機を作りましょ

問題③ 10×10 ★★★☆☆ ときには大胆にいきましょ

問題④ 10×10 ????? 誰だおめぇ


 へや同士の間の「ドア」を一つだけにするパズルです。他のへや系にはないへやの中で黒マスによって分断されてはいけない(へや内分断禁)というルールが強く、方向転換機が崩壊しやすいと感じました。無難に小さい部屋を隣接させて、どちらかが黒となるペアを組み合わせていけば方向転換機の形になります。

 ところで、先日のパズル同好会の会合でSolyu氏とワンルームワンドアについて話したところ、ドアの解釈を広げれば変な方向転換機が作れることが発覚しました。問題④を解いてみればわかると思います。


ウソワン

ウソワンのルール

方向転換機の作りやすさ ★★☆☆☆


問題①  6× 6 ★★☆☆☆ 二つの方向転換機

問題②  8× 8 ★★★☆☆ 二種類の方向転換機

問題③  8× 8 ★★★☆☆ 善人だらけの巨大部屋

問題④ 10×10 ★★★★☆ 堅実な装置の量産


 へや系で唯一数字マスを塗ることができないパズルです。数字は縦横4マスのうち黒マスが入るマスの数を表していますが、へや内で一つだけウソをついている数字があります。数字が影響するマス数が小さく、数字をたくさん置かないといけないので盤面が結構煩雑になりがちです。数字4つに対していい感じにへやを区切れば方向転換機を実装できます。わりと場所と表出数字が必要なので、方向転換機一つ当たりにかかるコストが高い高級な方向転換機に見えます。


ひとりにしてくれ

ひとりにしてくれのルール

方向転換機の作りやすさ ★★★★★


問題①  6× 6 ★☆☆☆☆ かんたん

問題② 10×10 ★★☆☆☆ あからさま

問題③  8× 8 ★★★☆☆ みつけて

問題④ 10×10 ★★★★☆ じゅんばんに


 数字を減らして各行各列ひとりにするパズルです。数字系には属しますが数独のように数字自身の意味はありません。ルールは比較的わかりやすく、単純な分取っ掛かりが少ないです。そこで方向転換機の出番! 同じ数字をいくつか並べるだけ再現できる! 簡単! でも作るときに自身に面倒なのが空いたマスを埋めること。見栄え的にすべてのマスに数字が入っていたほうが良いので数字を入れますが、その作業が少したいへん。もちろんいれなくても大丈夫で、問題②はその最たる例です。


やじさんかずさん

やじさんかずさんのルール

方向転換機の作りやすさ ★★★★★


問題①  6× 6 ★★☆☆☆ やってみよう

問題②  8× 8 ★★☆☆☆ 慣れてもらおう

問題③ 10×10 ★★★★☆ 入り口を探そう

問題④ 10×10 ★★★★☆ ハマって楽しもう


 ウソワンに続いてうそつき系パズルその2です。矢印の示す方向に数字の分だけ数字が入るというルールですが数字マスが黒く塗られるとそのヒントは無効になります個人的には「↓99」のようなあからさまなウソは入れたくない派ですが、そうすると取っ掛かりが少なくなるので簡単な問題には入れたほうがよさそうですね。

 方向転換機は下図のように2種類作れました。やじさんかずさんの方向転換機はへやわけと違って他のルールによって潰されることがない。とても快適!!!


Context

Contextのルール

方向転換機の作りやすさ ★☆☆☆☆


問題①  6× 6 ★★☆☆☆ 0が初動だ

問題②  8× 8 ★★☆☆☆ 4が初動です

問題③ 10×10 ★★★☆☆ 4が初動ですよ

問題④ 10×10 ★★★★★ 初動がないですよ


 context・・・背景、状況、文脈、場面などを意味する


 盤面にいくつか数字がありますが数字マスが白マスなら上下4方向、黒マスなら斜め4方向の黒マス数表しています。このパズルは今回のパズルの中で最も取っ掛かりを見つけにくいといっても過言じゃない気がします。方向転換機以前にパズルが難しい!!! のでとりあえずわかりやすい初動などを下に示しておきます。

 そもそも問題が作りにくいContextですが、2をうまいこと黒マスの斜めに配置することで方向転換機を再現できました。どうにかなるもんですね。でもその仕様上大きさは4までしか作れません。


黒どこ

黒どこのルール

方向転換機の作りやすさ ★★☆☆☆


問題①  6× 6 ★★☆☆☆ 入門用問題

問題② 10×10 ★★★☆☆ 基本的用例

問題③  8× 8 ★★★★☆ 未確定接地

問題④ 10×10 ★★★★☆ 大規模装置


 黒マスはどこだ略して黒どこです。数字は数字マスから上下4方向に延びる白マスの合計数を表しています。ルールは比較的わかりやすいと思いますが、とっかかりがちょっとわかりにくいです。方向転換機は同じ数字を並べてうまいことやると作れますが、装置一つ当たりが大きくなってしまいます。逆にそれを利用してダイナミックな動きができます。問題④で実装しました。


クロシュート

クロシュートのルール

方向転換機の作りやすさ ★★☆☆☆


問題①  6× 6 ★★☆☆☆ 初歩

問題②  8× 8 ★★★☆☆ 工場

問題③ 10×10 ★★★☆☆ 飛躍

問題④ 10×10 ★★★★★ 迷宮


 shootではなくchuteが由来のパズルです。数字について、上下4方向にそのマスから数字の分だけ離れたマスのうち1マスだけが黒マスになります。これがかなりクセのあるルールで、分断禁とは相性が悪そうに見えます。Puzzle Squareの投稿数は現在(2023/12/21)時点で6問と非常に少ないパズルで、方向転換機のようなものは見られませんでした。

 方向転換機を作るのが難しそうですが、同じ数字を4つ固めて枠を調節することによりなんとか実現できました。まだ開拓されていないだけで結構手筋がありそう。


ノースリー

ノースリーのルール

方向転換機の作りやすさ ★★★☆☆


問題①  6× 6 ★☆☆☆☆ きほんの形

問題②  8× 8 ★★☆☆☆ いろんな形

問題③ 10×10 ★★★☆☆ だいじな形

問題④ 10×10 ★★★★☆ れんさの形


 ついにきました数字無し系パズルです。白丸が乗っているマスのうち一マスが黒マスになりますが、黒マスがタテヨコに等間隔に3つ並んではいけないという制約があります。白丸のおかげで自由に黒マスを配置できて方向転換機も簡単に作れます。しかし前述のルールのせいで大きさ5以上のものはどうやっても作れなかったり、簡単に方向転換機が潰されたりします。入り口は作りやすいので方向転換機を残すように作ろう。


Aquapelago

Aquapelagoのルール

方向転換機の作りやすさ ★★★★☆


問題①  6× 6 ★☆☆☆☆ らくらく

問題②  8× 8 ★★☆☆☆ 黒マスをたくさん配置しよう

問題③ 10×10 ★★★☆☆ 方向転換機をたくさんを使おう

問題④ 10×10 ★★★★☆ 数字を使おう


 ここからは2×2禁という少し変わったルールを持つパズルです。文字通り白マスが2×2の塊になってはいけないというルールです。このルールが方向転換機どう影響を与えるかといいますと、、、




 白マスで2列挟むだけで作れます。大掛かりな装置も必要なく簡単に作ることができる!!!



 ・・・と思いきや右図のように2×2禁のせいでかなり簡単に崩壊します。2×2禁は諸刃の剣、うまく使いこなさないといい問題はできません。 


 さて、本題のAquapelagoです。数字は角でひとつながりになる黒マスの数を表していますが、この数字は方向転換機と相性が悪いです。大きな数字を使おうとすると方向転換機を導入するのにあたって少々邪魔になります。黒マスを初めから自由に配置できる特性を利用しつつ小さな数字で盤面を整えるといい感じに方向転換機を作れます。問題④では頑張って大きい数字(といっても4)と方向転換機をつなげてみようとしました。


ガイドアロー

ガイドアローのルール

方向転換機の作りやすさ ★★★★☆


問題①  6× 6 ★☆☆☆☆ らくらく

問題②  8× 8 ★★☆☆☆ さくさく

問題③  8× 8 ★★★☆☆ くるくる

問題④ 10×10 ★★★★☆ ぐるぐる


 2×2禁その2です。Aquapelagoと違い最初から黒マスは置けませんが矢印を配置できます。すべての矢印が★印に向かうようにする必要があるので盤面全体に流れが生まれ、独特な決まり方をします。さしずめ封鎖禁とでもいったところでしょうか。

 盤面の分断が発生しなくても方向転換機が使えるので面白い動きをします。方向転換機と絡めた手筋を識者の方に探究してもらいたいですね。


 

終わりに

 以上黒連分断禁系パズル13種について順に紹介しましたが、どのパズルでも方向転換機を作ることができました。みなさんもいろんなパズルで方向転換機を作りましょう!

 最後までお読みいただきありがとうございました!


 ここまで読んでくれた皆さんにへやわけを一問プレゼント!!


へやわけ

問題⑤ 17×17 ★★★★☆ 読者特典


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