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【部員の日記】その13 ~ルール推理型パズルの試作~

突然ですが、皆さんはゲームをプレイする時、説明書の内容をよく読んでからプレイする方でしょうか。

大抵の人は「いいえ」と答えるのではないでしょうか。そもそも、最近のゲームでは説明書が存在することの方が少ないですよね。代わりにチュートリアルという仕組みを導入し、とりあえずゲームを体験させてみる、という構成のものが最近は多いです。


このチュートリアルの目的として、始めてから実際に遊べるまでの時間を短くするというプレイヤー側の負担の減少が挙げられるのではないでしょうか。実際、せっかくプレイしようとしたゲームがタイトル画面の表示に10分も掛かるようでは、はじめのやる気も何処かへ行ってしまうでしょう。

また、説明文がだらだらと続くと、それを読むのが面倒な作業に見えてしまうことも多いでしょう。これはプレイヤーにとって、説明文を読んで指示された動作を行う以外の行動の選択権が存在しないからです。


チュートリアルの良い例がスーパーマリオブラザーズの1-1です。このステージは正に初めてプレイする人向けに設計されていますが、しかし画面内には何の説明文もありません。パワーアップもジャンプも何も説明されませんが、しかしこれらは1-1というステージをクリアする過程でしっかりと学べる構造になっているのです。


さて、この話をパズルに持ち込むと、パズルのルール説明を読んでもらう代わりに、チュートリアル問題を解いてもらうという手法が考えられます。ですが、それはどう実現したらよいのでしょうか?

そんな事を考えていたとき、ふととあるパズルゲームが思い浮かびました。

その名も、UNDERSTANDです。


UNDERSTANDは、Artless Gamesがリリースした一筆書きパズルゲームです。 各ステージには共通のルールを持つ幾つかのパズルが有りますが、そのルールは秘密にされています。プレイヤーはそれぞれのステージで、自分が描いた線が『どのルールに合致しているか』という情報だけを貰えます。その情報を頼りに、全てのルールを推測し、全てのルールに沿った線を描くことがUNDERSTANDの目的です。

要するに、このパズルにはルール説明文が全く存在しません。最初から自らの手でパズルを解くことになるのです。


ということは、このUNDERSTANDの手法をもとに、パズルのチュートリアルを制作できないでしょうか。つまり、こういうことです。

  1. 幾つかのパズルが与えられる。全てのパズルを解くとクリア。

  2. 全てのパズルでルールは共通するが、ルール自体は与えられない。 プレイヤーはパズルを解く過程で、ルールを推測する必要がある。

  3. 全てのパズルはただ1つの解を持つ。

  4. 最初のパズルは、正解盤面も一緒に与えられる。

これで、方針は定まりました。後は適当なパズルのルールと、そのチュートリアルを制作するだけです。しかしそのとき、私はとある感想を抱きました。



……これ、推理小説に似ていないだろうか?



推理小説と言えば、まず何らかの謎が与えられ、その謎を解くためのヒントを随所から探し出し、そして真相を導き出すという、大人気ジャンルですね。

このパズルも同じように、秘密のルールという謎が与えられ、そして正解盤面という情報からヒントを探し、そしてルールを推理するものだと言えます。

そう考えると、『全てのパズルはただ1つの解を持つ』という文章が、『真実はいつも1つ!』という某名探偵の決め台詞に見えてこないでしょうか?


そして推理小説と言えば、よくある手法の1つが叙述トリックです。読者の思い込みを利用してミスリードに仕向ける技のことですね。

ですが通常、パズルにはこの手法を適用しにくいです。大抵のパズルは理詰めか試行錯誤のプロセスを幾重も掛けたもとに成り立っており、ある意味で最も思い込みが反映されにくいものとなっています。


しかし、このパズルは違うのです。 なぜなら、ルールのミスリードが出来るからです。


こうして、数日にわたる思考の末に、真のルールとそのミスリードの案が完成しました。 それを元に問題制作を行い、解きながらルールを推理するパズル『Puzzle Understand』が完成しました。もちろん、名前のUnderstandという部分は先程のパズルゲームに由来しています。

前半で推理したルールが後半で矛盾し、新たにルールを考え直さなければならなくなるという、歯ごたえのあるパズルに仕上がりました。

初めのチュートリアルという概念はどこへやら、という感じですが、実は一定の役割は保っています。それは正解盤面を与えるという役割です。これを元にあれこれ推測し、正しいルールを探っていくという解き筋になる訳ですね。


以下に、3つのセットを用意しました(それぞれのセットでルールは異なります)。

皆さんも、こつこつと推測を積み立てていき、たった1つの解に辿り着くという、普段ではなかなかない探偵気分を味わえるのではないでしょうか。



【第1セット】



ルールのヒント(反転で表示されます)


  1. このパズルは盤面を幾つかの領域に分割するパズルで、どの盤面にもある特徴を持ったマスが唯1つ含まれています。

  2. それは、○で囲まれたマスです。このマスは領域の何を表すでしょう?

  3. 領域の中の数字で、○で囲まれていない数字だけで○で囲まれた数字を表す方法はあるでしょうか……?

  4. その方法は、総和だけではありません。他に何が有るでしょう?

  5. 全ての数字を足してダメなら、●●てみれば……?


ルールの答え(反転で表示されます)


  1. マス目に沿って縦横に線を引き、盤面を幾つかの領域に分割します。領域分割に関係ない線を引いてはいけません。

  2. 各領域には、○で囲まれたマスが唯1つ有ります。

  3. ○で囲まれたマスに入る数字は、その領域に含まれる他のマスの数字全ての和または全ての積になります。(他に数字がない場合は0が入ります)



【第2セット】



ルールのヒント(反転で表示されます)


  1. このパズルは盤面を幾つかの領域に分割するパズルです。分割の仕方は○と数字によって条件付けられます。

  2. 各領域の中には、唯1つ数字(または?)が入っています。

  3. ○の有る格子点と、そうでない格子点とでは、線の引き方はどう違っているでしょうか?

  4. Q4の解答だと思ったものが、解答と認識されなかったでしょうか?実は、その盤面は正解ではないのです。Q5を一度解いてみることをお勧めします。

  5. Q5で行き詰まりましたか?実は、数字はその領域の面積を表しません。では、一体何を表しているのでしょう……?これまでの正解盤面に、そのヒントが有ります。

  6. Q1とQ5の正解盤面を見比べましょう。周りが変化したことで、数字が変化しています。つまり、数字はその領域だけではなく周りの領域にも左右されます。

  7. 数字は、その領域が●●ている●●の数です。


ルールの答え(反転で表示されます)


  1. マス目に沿って縦横に線を引き、盤面を幾つかの領域に分割します。領域分割に関係ない線を引いてはいけません。

  2. ○のある格子点では、外周を含めて線が3本以上通ります。逆に、○のない格子点では、外周を含めて線が2本以下だけ通ります。

  3. 各領域には、数字か?の入っているマスが唯1つ含まれています。

  4. 各領域が含む数字は、その領域が接している領域の数を表します。(外側の余白部分は接している領域として数えません)



【第3セット】



ルールのヒント(反転で表示されます)


  1. このパズルは盤面を幾つかの領域に分割するパズルです。分割の仕方や領域の形、領域と数字との関係に着目しましょう。

  2. 一見すると、このパズルは『四角に切れ』と同じように見えます。しかし、Q3-3からQ3-5では、そのルールでは答えが1つに定まりません。 何か別の条件が必要です。それは何でしょう……?

  3. 数字の有るマスをよく見てみると、どのマスも○○の○に有ると分かります。

  4. 一方、Q3-6では通常の『四角に切れ』では答えが有りません。何かのルールが緩められている必要が有ります。 更にQ3-7とQ3-8を見ると、0が書かれたマスが有ります。どういうことでしょう?

  5. 破る必要がありそうな推測として、『全ての領域は長方形』『全ての領域に数字or?が唯1つ』の2つが考えられます。今までの問題の答えが1通りに定まるという条件の下で、どちらの推測が破れそうでしょうか……?

  6. Q3-6の正解盤面には、気になる領域が1つ有ると思われます。その領域に含まれる数字は、その領域の何をどう表しているでしょう?


ルールの答え(反転で表示されます)


  1. マス目に沿って縦横に線を引き、盤面を幾つかの長方形の領域に分割します。領域分割に関係ない線を引いてはいけません。

  2. 数字または?のあるマスは、そのマスを含む長方形の4隅のうちいずれかに位置しています。

  3. 長方形の面積は、その領域に含まれる全ての数字の合計です。但し、?には0以上の任意の整数が入ります。



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